高学歴×介護福祉士の資格試験対策

介護資格の試験対策について書いています。

解答速報が間違ってる!? ~第32回介護福祉士国家試験~

今回は第32回介護福祉士国家試験の記事に戻ります。

解答速報での解答割れについて3問考察しました。
今回は解答割れはしていないが気になる問題について考察してみたいと思います。

それは、問題7、「社会の理解」の問題です。
問題は1つだけなのに考察が長くなり読みにくいかもしれませんが、是非最後までお付き合いください。

問題7
Bさん(80歳、女性、要介護1)は、身寄りがなく一人暮らしをしている。老齢基礎年金で暮らしてきたが、貯金が少なくなり、生活が苦しくなってきた。このため2万円の家賃支払いも困難になり、通所介護事業のC生活相談員に、費用のかかる通所介護(デイサービス)の利用をやめたいと言ってきた。
C生活相談員の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 介護支援専門員(ケアマネジャー)に、通所介護(デイサービス)の利用中止を依頼する。
2 介護支援専門員(ケアマネジャー)に、サービス担当者会議で利用中止の検討を依頼する。
3 福祉事務所に相談するように助言する。
4 これまでどおりの利用を説得する。
5 無料で利用できる地域の通所型サービスを探す。


8社の解答速報を見ましたが、この問題に対する解答はすべて「3」でした。
私は「2」と解答し、いまだに「2」が正解ではないかと思っています。
その根拠を以下に記します。


私が思う、この問題を解くのに必要となる情報は、
1.生活相談員の役割
2.通所介護事業所とケアマネジャーの関係
3.福祉事務所の役割
4.サービス担当者会議の役割
です。
さらに、
5.過去問の傾向
も踏まえて見てみます。



1.生活相談員の役割


生活相談員は相談・援助業務を行う職種です。ケースワーカーと呼ばれます。
その名の通り、利用者や家族の相談を受け、必要なサービス提供に結びつける役目があります。
利用者の相談を受け、ケアマネジャーに繋ぐ。必要な援助を提供する。という点で、「1」「2」「3」は正解になり得るかな、と考えられます。

「4」に関しては、お金が少なく困っている利用者に対し、そのまま続けるよう説得するのは何の解決にもならず相談・援助ができていません。「4」は不正解でしょう。

また、このC生活相談員通所介護事業所の職員です。施設内での相談・援助を行う役割であって、自ら他の施設を探すようなことは役割として持っていません。
地域の利用できる施設を探すには地域包括支援センターに依頼するべきです。
よって「5」も不正解でしょう。


2.通所介護事業所とケアマネジャーの関係


Bさんが利用しているサービスは、介護給付の居宅介護サービスに位置する「通所介護」です。
通所介護事業所外に担当のケアマネージャーがいて、ケアプランの中に当通所介護の利用を入れていることになります。
したがって、サービスの利用停止は通所介護事業所だけでは決められず、ケアマネージャーに相談しなければなりません。
選択肢「1」「2」は両方とも利用の中止についてケアマネージャーに依頼しています。
どちらがより適切かについては、介護サービスは多職種によるチームで行うこととされているので、生活相談員の意見だけで中止と決めてかかるのは不適切と考えられます。よって「検討を依頼する」としている「2」の方がより適切でしょう。


3.福祉事務所の役割


ここまでで選択肢は2つに絞られました。
次は選択肢「3」にある「福祉事務所」についてです。
福祉事務所とは私もよく知らなかったので、調べてみました。
「全国生活保護裁判連絡会」のホームページ
http://www.saibanren.org/welfare/003-howto.html
によると、
福祉事務所とは、さまざまな福祉関係の法律に基づき市町村や都道府県に設置され、自治体の第一線で、福祉についての仕事やサービス全体を行っているところです。
福祉に関するさまざまな相談を受け付けていて、生活保護に関する相談もできるそうです。

ということは、貯金が少なくなり生活が苦しくなったBさんが相談する機関として、福祉事務所は適切と考えられます。

さて、問題に戻ってみましょう。この問題は「最も適切なもの」を選ぶ問題です。最後に「2」と「3」のどちらが適切かを選ばなければいけません。


4.サービス担当者会議の役割


最後に考えたいのは、サービス担当者会議の役割です。
サービス担当者会議とは、利用者を中心に、家族、ケアマネージャー、事業所の職員、主治医などさまざまな職種が集まり、介護サービスのあり方を会議する場合です。本人も参加することが望ましいとされています。
ケアプラン変更時には必ず開催しなければなりません。その他にも、提供するサービスの変更を検討する際などに随時開催されます。

問題の事例では、本人が利用の中止を申し出ているため、会議を開催する意義はあります。その会議の中で、他の安価サービスに移行するのか検討できます。

さて、「2」と「3」どちらがより適切か。「サービス担当者会議で利用中止の検討を依頼する」のと「福祉事務所に相談するように助言する」のが正しいのか。
ここからは個人的な意見が強いかもしれません。
Bさんは「利用中止」を望みました。そのことは担当のケアマネジャーに報告をしなければなりません。ケアプランの責任を負っているのはケアマネジャーですから。
それを考えると、まずケアマネジャーに相談するのが一番適切だと私は思います。ケアマネジャーに相談し、サービス担当者会議を開いてもらい、今後のサービス利用について話し合う。
とは言うものの、選択肢には「中止の検討を依頼」とあり、少し引っ掛かりました。すぐ中止に持っていってはダメではないか?と。でも中止するよう進めている訳ではなく、「検討」を依頼しています。検討ということは中止しなくて済むような方法を考えることも含まれます。そこで「2」は適切だと思い解答しました。

もちろん「3」の福祉事務所に相談するように助言することは的確なアドバイスではあります。しかし、
・ケアマネジャーをすっ飛ばして(介護サービスの代替案を考えることなしに)他の機関に繋げる点。(後に報告はするのでしょうが)
・福祉事務所に相談しても、生活保護か何かの支援を受けるには様々な手続きがありすぐに支援を受けられる訳ではない点。要介護の方にはその手続きも困難でしょう。
生活相談員に相談したのに福祉事務所を紹介されたら、「あなたたちは何も考えてくれないのね?」と思われてしまいそうな点。

等を考え、「2」の方がより適切かな?と思いました。


5.過去問の傾向


ここで過去問の似たような問題を見てみたいと思います。

まずは
①【第31回 問題9】
これもデイサービスの利用が困難になったと相談を受け、適切な対応を答える問題。困難な、理由は孫の面倒を見なければならないため。

これの正解は「担当のケアマネジャーに、再調整を依頼する」です。
児童相談所に相談するように助言する」が誤りの選択肢としてありました。

非常に似た問題ですね。これは児童虐待が関係してないので、児童相談所は不適切なのは明らか。
今回の問題よりはかなり簡単でしょう。

この傾向だと「2」が正解でいいような気がしますが、昨年に似た問題が出て、今回も似たような正解というのはあり得るのか?少し不安になってきました(笑)


次に
②【第30回 問題15】
利用者負担を払えないから訪問介護を断りたいと相談があり、それに対する適切な対応を答える問題。

正解の選択肢は「担当のケアマネジャーに検討を依頼する」です。
生活保護制度の申請を勧める」が誤りの選択肢としてありました。

あれ?ほぼ一緒の問題?
選択肢が、
第30回「検討を依頼」→第32回「サービス担当者会議で中止の検討を依頼」
第30回「生活保護制度の申請」→第32回「福祉事務所に相談」
と、若干言い回しが違いますが、そこが正解に影響するのか。。。


2問類題を見ました。
3年連続で似た問題が出ていて、過去2回の試験センターが発表している解答が、「ケアマネジャーに検討を依頼する」となっている。
その他にも、介護福祉士とケアマネジャーの連携に関わる問題は多いです。この連携は試験センターも重要視していると考えることができるのではないでしょうか。
こういった傾向を踏まえても、やはり第32回の問題7は「2」が正解なのではないかと思います。



考察は以上となります。読んでいただきありがとうございました!
各社の解答速報に反し「2」が正解だと主張しておりますが、これもまた試験センターの解答がすべてです。それを待つしかありません。それで正解が「3」だったら素直に諦めます。
でももし「2」が正解だったら、めっちゃ嬉しい!